Story
写真を残そうと思った。
あの子がいなくてもあたしは幸福だった、と証明するために。
ふと顔を上げる。
光を見た。ドレスの女が立っていた。
笑っているようにも泣いているようにも見えた。
ねえ、そんなに美しいのに、何が悲しいの。
────自由で、偶然で、刹那的で、眩いばかりのあなたと、その光彩を祝って。
作演出挨拶
まーーーーーーこのご時世で本当に悔しいこともありましたし悲しいこともありましたしこの数年間で演劇のやり方も大きく変わってしまいましたし自らの人生に対して焦りもあったり失望もあったりしますが、やっぱり今できることを続けていくしかありませんよね!!!
というようなことを伝えるつもりは全くございません、私たちの焦りも失望も絶望も後悔も鬱屈も憤懣も孤独もたとえば努力とか忍耐とかでそう簡単に抹消できてたまるかというクソデカ極まりないお気持ちをテキストエディタに叩きつけたところ、光に満ちたキラキラなお話が完成いたしました。
裏切りや別離、虚構性ゆえの美、モノローグの共鳴、あるいは文脈からの解放、意味からの解放、言葉からの解放、云々、といったキーワードも一切忘れていただいて構いません。これはあくまで希望と自由と幸福のお話です。たぶん。
傘は閉じてください。差し支えなければ海のことでも訊きたい
(千種創一『千夜曳獏』、青磁社、2020年)